幻灯機の光源や劇場のスポットライト

2011.07.07

ウェルスバッハ博物館のローランドーアドウンカによると、1801年にカールーフォンーフランケンシュタインは、酸化カルシウムや酸化マグネシウムでつくられた板や球を酸水素炎で強熱すると、酸化カルシウムや酸化マグネシウムが驚くほど強い白い光を放つことを見出したという。これを人類が初めてつくった「白い光」と言ってよいであろう。彼はこれを「ルナーライト(Lunarght)」と名づけた。「夜空に輝く満月のような白い色の明かり」を意味している。1825年には、炭酸カルシウム、つまり石灰石を強熱して得られる白熱光を、「放物而鏡」(大型の天体望遠鏡などに用いられる特殊な鏡)を使って一点に集めて得られる光源が、英国のトーマスードラモンドとゴールズワージー・ガーニーによってつくられている。石灰石を高温に加熱することによって得られる白い光は、「ライムライト(石灰光)」と呼ばれるようになった。酸水素炎は爆発する危険が高いので、安全な酸素とほかの燃料(たとえばアルコールや石炭ガス)で高温の炎をつくることも試みられた。マイケルーファラデーの1860年の講演「ロウソクの科学」には、ライムライトも登場する。ファラデーは子どもたちの眼の前で酸素と水素を燃やし、高温の炎をつくって石灰石を加熱してみせた。彼は子どもたちに、「ライムライトは電気の光と輝きを競うこともできるし、また太陽の光とも肩を並べることができます」と語っている。ライムライトはそれほど白く明るかったのである。ここでファラデーが「電気の光」と呼んでいるのは、そのころ発明されたばかりの、白金線をフィラメントとする電球ではなく、おそらくつぎに説明する「炭素アーク灯」の白い光のことであろう。ライムライトは、幻灯機の光源や劇場のスポットライトとして、20世紀の初めまで使われてきた。しかし、一般の家庭に普及するイノベーションにはならなかった。なぜなら、爆発の危険性、ガスによる中毒、酸欠の危険性、室内温度の上昇などがあったからである。